米国ABC戦略ファンド(5倍コース)とグローバル5.5倍バランスファンドの違い。

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ABCは知ってても―、それだけーじゃこまりますーという歌があったような、無かったような。たのしげな歌とは反対に、全力全開で基準価格と資産を減らし続ける米国ABC戦略ファンド。

中身はどんな化け物がひそむのかと思ったけれど、あれ?割とこう・・、普通?

ファンドには1倍コース、3倍コース、5倍コースとそれぞれレバレッジの異なるファンドが用意されていて。これまた意外なことに1倍コースが最も純資産が高かった。

NISAでの売れ筋商品がブル・ベア商品とか地獄のようなランキングを誇る国内事情。あー、でもあれは証券会社が買い煽っているだけ。本当はみんなしっかりしているんだなって。ちょっと感心しかけたけれど、単に3倍コース(純資産0.37億円)と、5倍コース(純資産1.83億円)と繰り上げ償還寸前だったりして笑えない。

5倍のレバレッジと言えば、グローバル5.5倍バランスファンドが思い出される訳で。そこに未来へのヒントがあるかも知れない。調べなきゃ。

memo

グローバル5.5倍バランスファンド(1年決算型)20221120
基準価額:7,197円 / 前日比(円)-100円 / 前日比(%)-1.37% / 純資産総額72.44億円

日経平均:27,899.77円 / ドル円:140.34円

ダウ平均:33,745.69 / ナスダック総合指数:11,146.06 / S&P500指数:3,965.34

be careful

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「そうなんだー」くらいの肩の力を抜いた状態で、たのしんでいただければ幸いです。

diary

大和さんの公式サイトで資料を見てきたところ、米国ABC戦略ファンドはこんなファンド。

・JPモルガン・チェース社の連動債券を使ったファンド
・米国の株式、リート、債券、ゴールドに投資する(為替ヘッジなし)
・景気サイクルに基づいた資産配分を用意し、景気サイクルごとに使い分けるアクティブ運用
・収益分配方針に基づいて収益の分配を行う(分配実績あり)

冒頭から連動債券使っていますと書いている点は開き直りというよりは、自信の現れにも。

目論見書によれば信用格付けは「発行体格付けとしてMoody’s:Aa2 / S&P:A+ / Fitch:AA」とのことなので、連動債券だからとアレルギーを出すひと以外は・・と、書きかけて思い出した。JPモルガン社は米国最大手の銀行なので格付けには下駄がありそうな気も。言い出したらキリがないけれど。

いろいろどす黒いあれやこれをすっとばして、続き。

ええと、1倍コースでさえも連動債券で作られているため、中身は完全にブラックボックス。Daiwa US ABC Strategy Indexという基準を採用。Daiwa US ABC Strategy Indexは、景気サイクルの局面判断によって米国の株式、債券、リート、金の配分比率を調整、市場リスクが急激に高まった場合は、資産配分比率を切り替える指数。原則日次でリバランスされる。

ファンドレターに目標組み入れ比率があった。

資産クラス景気回復景気拡大景気減速景気後退
米国株式9%18%9%4.5%
米国リート9%18%9%4.5%
米ドル建て新興国債券9%18%9%4.5%
米国ハイイルード債券9%18%9%4.5%
米国投資適格社債0%18%54%0%
米国国債54%0%0%72%
10%10%10%10%
合計100%100%100%100%
米国ABC戦略ファンドの目標組み入れ比率

ちょっとわかり難い。つまりこう?

景気局面株式高リスクな債券国債リート
景気回復9%18%54%9%10%
景気拡大18%54%0%18%10%
景気減速9%72%0%9%10%
景気後退4.5%13.5%72%9%10%
ABC戦略ファンドの景気局面ごとの資産比率

んー。つまり株式とかリートは主力ではなくて、債券のコントール、その中でも安全な国債とリスクが高い代わりにリターンを狙える米国投資適格社債をダイナミックに動かしている。金は一定のリスク軽減効果を期待して固定。ふむふむ。

連動債券の発行元が米国最大手の銀行、という事情を考えれば得意分野でリターンを取りに来る戦略は納得できるかも。

加えて月次レポートによれば、景気サイクル局面判断は景気拡大局面と判断。2022年11月の目標ポートフォリオは以下。

資産クラス1倍コース3倍コース5倍コース
米国株式18%54%90%
米国リート18%54%90%
米ドル建て新興国債券18%54%90%
米国ハイイルード債券18%54%90%
米国投資適格社債18%54%90%
米国国債0%0%0%
10%30%50%
合計100%300%500%
米国ABC戦略ファンドの2022年11月の目標ポートフォリオ

んー。ああ、そういう仕組みか。景気サイクルを判断し、目標組み入れ比率から1倍の比率を持ってくる。あとは3倍、5倍の倍率をそれぞれ適用している感じなんだね。これだけ見ているといたって普通というか、ルール通りに運用するファンドに見える。

何がダメなのだろう。

月次レポートには騰落寄与に関する情報がないから、日興さんとは異なり原因がわかり難い。これはちょっと下落が続くと不信感募らないかなぁ・・。心配になる作り。

1倍コースをベースにグローバル5.5倍バランスファンドと構成比率を比較してみるとこんな感じ。

銘柄株式債券リート
米国ABC戦略ファンド18%54%18%10%
グローバル5.5倍バランスファンド18.2%72.7%4.5%4.5%
米国ABC戦略ファンドとグローバル5.5倍バランスファンドとの資産比率の違い

あれ?リートと金の比率が高くて債券も控えめ。株式は同程度か。リートはボラティリティ大きいから、株式と同比率持つということは明らかに攻めな組成。

債券の比率は株式1に対して債券3になっているので丁度よさげにも。あ、残りでリートと金に割った感じなのか。リスクとってるなー。好景気なら悪くはなさそうかも。って、景気拡大局面と判断しているからいいのか。ちょっと債券の中身の違いが気にはなるけれど。

ところで、今って景気拡大局面なの?

中央銀行が政策金利を上げている理由って、インフレを止めるために景気を冷まそうとしているというお話でなかったっけ。んーん。なんかもやもやしてきた。

この記事で掲載しているスクリーンショット画像は松井証券ホームページの画面をキャプチャしたものです。

基本情報

米国ABC戦略ファンド(5倍コース)基本情報

タイトルもあるのでここでは5倍コースの情報。設定来高値は2021年9月、このあたりは金融緩和の影響で納得できる。でも設定来安値が2022年10月はどういう・・。

あれ?まてよ。グローバル5.5倍バランスファンドと、グローバル2倍株も2022年10月が設定来安値だ。対してグローバル3倍3分法ファンドは2020年3月。

2022年10月って、米国のQT開始の影響とFRBの利下げ期待が「あるわけねーだろあほんだら」ってぶったたかれた頃合いだっけ。9月から10月はスゴイ株安にもなっていた記憶がある。グローバル3倍3分法ファンドは先進国株式の比率が低く、新興国と国内の比率が高いから、米国リスクからうまく逃げていたのかも。

基準価格情報

米国ABC戦略ファンド(5倍コース)基準価格情報

ジャンプ台が用意され始めたようにも見えるけれど、厳しそう。

あ、米国ABC戦略ファンドってコロナを体験していない?直撃後の金融緩和時期からの運用開始だったのか。だとしたら、グローバル5.5倍バランスファンドのように地獄からの生還を体験していない投資家の方が逃げ出してしまうのは止む得ないのかも。基準価格が戻らなくなるかも知れない恐怖は、苦しいよね。

基本リスク指標

米国ABC戦略ファンド(5倍コース)基本リスク指標

トータルリターン1年で年率▲113.8%。

参考までにグローバル5.5倍バランスファンドは▲68.9%、グローバル3倍3分法ファンドは▲26.3%、グローバル2倍株は1年の数字がまだないので6か月のもので▲11.6%。

米国ABC戦略ファンドとグローバル5.5倍バランスファンドの違いを簡単にまとめるとこう。倍率だけに着目すると似ているように見えて、実は全ての項目が異なる。

銘柄投資地域資産比率手段
米国ABC戦略ファンド米国景気局面を判断して動的変更連動債券
グローバル5.5倍バランスファンド全世界固定、債券アセットのみ緊急時可変現物と先物
米国ABC戦略ファンドとグローバル5.5倍バランスファンドの運用の違い

最も疑われるのは連動債券のパフォーマンスなのかも知れない。

けれど、米国は成長性も期待できる地域なので米国にリソースを多く集中するという選択肢は、長期での運用においてなら選びうる選択肢。問題は米国が不調な時に逃げ場がないことで、その時に純資産が流出を続けるとファンド運用にも影響が出てしまう。恐らく今はその状態。

米国ABC戦略ファンド(1倍コース)の現在の基準価格が8,537円、純資産は3.4億円。全てのコースを足してもグローバル5.5倍バランスファンドの純資産に満たないのは苦しいかも。

作りはおもしろいと思う。のだけれど。ぐー。

おつかれさまでした。

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